鹿の王 感想 ややネタバレ?

発売当初からずっと読みたいと思っていたけど、中々読めなかった鹿の王をお盆休みで読みました。

 

2人主人公で、視点が交互に入れ替わる構成。なので上巻は周りの状況を理解するのに手間取って、頑張って読み進めるという感じ。上巻の後半からはやっと世界や人物のことが分かり、感情移入もできてスルスル読み進められた。

 

物語は、病を通して、命の不思議さや、生きることについて考えさせられるお話。

学生時代に教養科目で運動や身体についての授業を取ったのだけど、そこで見た番組を思い出した。

骨を作る骨芽細胞と骨を溶かす破骨細胞。この2つの細胞が働くことで、骨が作られ、溶かされまた作られて、新しく生まれ変わることで骨が維持されている。そんな風に身体を正常に保ち、生かすために働いていた細胞たちが、何かをきっかけとしてなのか、いつしか死に向かうように動き始める。

生き物は必ず死に向かうようにインプットされているのかもしれない。そう思うと、命や生きていることの不思議さを感じます。

本文中に、そんなことを考えさせるような話があり、面白かったです。身近なところだと、鮭の産卵後のお話とか。

 

タイトル「鹿の王」という存在がでてきた時にはキタキターってテンション上がった!鹿の王という存在については、ゲド戦記でとても印象的だった言葉を思い出す。「力があれば何でもできるわけではない。力を持ったからこそ、やるべきこと・できることが限られていくのだ」と。歳を重ねると、本当にそうだなぁって思うんです。力だけじゃなくて、これまでの自分の歩みから、これからの歩みって決まってくるところがあるよねって。しみじみ。

 

ラスト、私はすごく良かったと思う。ヴァンが積み上げてきた関係がヴァンを救ってくれると信じられる素晴らしいラストでした。ハッキリと描いている訳ではないけど、そう感じられる、そこまでの積み重ねが生きてるよね。物語の良さだなぁ。

 

最後にキャラクターについて。

ホッサル:巻頭の人物紹介に医者とあったのでタンダみたいなキャラを想像していたから、読み進めてビックリ。でも、あの一癖ある感じもいいですね。

ヴァン:かっこよくて切ない人。幸せになってほしい〜!好きです。

ユナ:終始ユナの可愛さに癒される。現実でも、物語でも小さい子に癒されるのは変わらずですね。描写が可愛いし、その年代の子ってそうだよねって姪や甥を思い出す。

 

面白かったなぁ。読んでよかった。よいお盆休みになりました。3月に出た続編はホッサルとミラルの話らしい。時間見つけて読みたい。